営業利益が黒字かどうか
本業で稼げているかを示す数字です。営業利益が赤字で、補助金や資産売却などで最終利益だけ黒字になっている場合、評価は大きく下がります。銀行は「本業の稼ぎで返せるか」を見ています。
Column | 2026.08.08
融資が通るか通らないかは、銀行の胸三寸で決まるものではありません。見られている項目は、実はかなりはっきりしています。かつて融資を実行する側にいた立場から、審査の実際をお伝えします。
「銀行が何を見ているのか分からない」——資金調達のご相談で、最も多く伺う言葉です。決算書を出して、担当者と話して、しばらく待って、結果だけが返ってくる。その間に何が起きているのかが見えないため、対策の立てようがない、というお悩みです。
ですが、審査の中身はブラックボックスではありません。銀行が確認している項目には決まった型があり、何を見られるかが分かっていれば、事前に準備できることは相当あります。この記事では、決算書のどこが見られるのか、決算書に表れない部分で何が評価されるのか、そして融資が通らないときに実際に起きていることを、順に整理します。
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審査の項目は多岐にわたりますが、根っこにある問いはひとつです。「貸したお金は、約束どおり返ってくるか」。それだけです。
ここを押さえておくと、銀行の質問の意図がすべてつながって見えてきます。決算書を求めるのも、資金の使い道を細かく聞くのも、社長個人の資産状況を確認するのも、すべては返済の確からしさを測るためです。事業の将来性や社会的意義に興味がないわけではありませんが、それらは「だから返せる」という説明につながって初めて評価の対象になります。
逆に言えば、経営者側が用意すべきなのは「うちの事業は素晴らしい」という説明ではなく、「この資金をこう使い、こういう形で返します」という筋道です。ここが噛み合っていない申し込みは、事業の中身が良くても評価されにくくなります。
銀行の担当者は、あなたの会社を審査する人であると同時に、行内であなたの会社を説明する人でもあります。融資は担当者一人では決まらず、支店内や本部の決裁を経て決まります。つまり担当者は、その場にいないあなたの代わりに社内を説得する立場にあります。「担当者が納得できる材料をそろえる」ことは、そのまま「決裁に通る材料をそろえる」ことになります。
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決算書は、通常は直近3期分を並べて確認されます。単年度の良し悪しより、どちらの方向に動いているかが重視されるためです。その上で、次の5点はほぼ例外なく見られます。
本業で稼げているかを示す数字です。営業利益が赤字で、補助金や資産売却などで最終利益だけ黒字になっている場合、評価は大きく下がります。銀行は「本業の稼ぎで返せるか」を見ています。
債務償還年数と呼ばれる指標です。おおまかには「有利子負債 ÷(税引後利益+減価償却費)」で計算され、10年以内が一つの目安とされます。ここが長すぎると、新規の融資は難しくなります。
純資産がマイナス(債務超過)になっていると、審査は一段厳しくなります。金額そのものより、解消の見通しを数字で示せるかどうかが重要です。自己資本比率もあわせて確認されます。
売掛金・在庫・貸付金は、実態を疑って見られます。回収できていない売掛金、売れる見込みのない在庫、社長への貸付金などは、実質的に資産から差し引いて評価されることがあります。
設備資金なのか運転資金なのか、いくら必要で、何から返すのか。この筋道が通っているかを見ます。使途が曖昧な申し込みは、金額が小さくても通りにくくなります。
4番目の「資産の実在性」は、意外に思われるかもしれません。決算書の本体だけでなく、勘定科目内訳明細書まで確認されるのが通常です。ここで役員貸付金や仮払金が大きく計上されていると、その分は資産として評価されないだけでなく、資金管理の姿勢そのものを疑われることがあります。心当たりがある場合は、決算を締める前に整理しておくのが賢明です。
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数字による評価がある程度固まった後、それを補正するのが定性面の評価です。同じような決算内容でも結論が分かれるのは、たいていこの部分です。
3つ目については、少し補足させてください。毎月継続して入ってくる収益——保守契約、会員費、継続課金といったストック型の収益を持つ会社は、返済原資の予測が立てやすく、この点で有利に働きます。金融機関にとって、来月いくら入るか読める会社は、貸しやすい会社です。この観点は「ストックビジネスとは」のページでも触れていますので、あわせてご覧ください。
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断られたとき、銀行が理由を詳しく説明してくれることはあまりありません。ただ、実際に起きていることは、おおむね次のいずれかです。
この4つを見ていただくと分かるとおり、事業の中身そのものが理由で断られているケースは、実はそれほど多くありません。多くは、伝え方と準備、そしてタイミングの問題です。裏を返せば、対策の余地が大きい領域だということでもあります。
融資を実行する側にいた頃、印象に残っているのは、同じくらいの決算内容でも結論が分かれることでした。分かれ目になっていたのは、経営者が自社の数字を自分の言葉で説明できるかどうかです。数字を把握している経営者は、悪い数字についても隠さず、原因と対策をセットで話されます。その姿勢自体が、行内で説明する側にとっては何よりの材料になりました。
いま支援する立場になって思うのは、この差は準備で埋められるということです。決算書を良く見せる小手先の工夫よりも、自社の数字を月次で把握し、聞かれる前に出す。それだけで、銀行との関係は目に見えて変わります。
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すぐに決算内容を変えることはできませんが、評価のされ方を変えられる部分はあります。次の4点は、規模や業種を問わず取り組めるものです。
そのうえで、中期的には返済原資そのものを厚くする取り組みが効いてきます。毎月安定して入る収益をつくることは、資金繰りを楽にするだけでなく、金融機関から見た会社の姿を変えます。この考え方については「ストックビジネスとは?種類・メリット・始め方まで徹底解説」で、立ち上げの5ステップとして整理しています。
なお、賃貸不動産などの資産活用を法人名義で行う場合は、その借入と返済が決算書に表れます。物件ごとの収支をあわせて説明しなければ、数字だけを見た担当者には本業の返済能力が落ちたとしか読めません。この点も含めた注意点は「経営者の不動産投資は個人と何が違う?始める前に確認したい5つのこと」をご覧ください。
また、補助金を使った設備投資のためにつなぎ資金を相談される場合は、補助金の入金だけを返済原資として示すと慎重に見られます。銀行が見ているのは、その投資が事業として利益と現金を生むかどうかだからです。この点は「補助金は後払い。採択されても資金繰りが苦しくなる理由と5つの備え」で整理しました。
なお、当事務所は認定経営革新等支援機関です。金融機関に提出する事業計画の作成や、資金調達の場面での同席・説明の支援も行っています。詳しくは「伴走支援」のページをご覧ください。
FAQ
赤字イコール否決ではありません。銀行が知りたいのは「返済できるかどうか」であり、赤字の中身と今後の見通しが説明できるかが分かれ目になります。一時的な要因による赤字で、その要因が解消済みであることを数字で示せれば、評価は変わり得ます。逆に、赤字が続いているのに原因の説明も改善計画もない場合は、金額の大小にかかわらず判断が難しくなります。
一般的には直近3期分を並べて見ます。単年度の数字よりも、売上・利益・借入・純資産がどの方向に動いているかという流れを重視するためです。あわせて、決算から時間が経っている場合は直近の試算表の提出を求められます。決算書だけでなく、勘定科目内訳明細書や法人税申告書一式まで確認されるのが通常です。
決算書3期分と法人税申告書一式、直近の試算表、今後12か月程度の資金繰り表、そして借入金の一覧(借入先・残高・毎月の返済額・金利)の4点をそろえておくと、話が早く進みます。特に資金繰り表は、求められてから作るのではなく、あらかじめ用意して自分から出せる状態にしておくことをおすすめします。数字を把握している経営者だという印象そのものが、評価に影響します。