理由に当たりをつける
決算書と通帳を並べ、前の章の5つのどれに当たるかを見ます。利益+減価償却費が年間の返済額に届いているか。純資産は実質でプラスか。滞納はないか。ここが出発点です。
Column | 2026.09.19
「今回は見送らせていただきます」。理由は告げられません。しかし、断られる理由そのものは、ほぼ決まった場所にあります。まず自社がどれに当たるのかを見極めることです。そこが分かれば、次に何をすべきかも決まります。
本記事は、2026年9月時点の一般的な融資実務をもとに執筆しています。審査の基準や進め方は金融機関ごとに異なり、外部に公開されていません。本記事は一般的な考え方を整理したものであり、個別の案件における融資の可否を判断したり保証したりするものではありません。また、信用保証協会の保証制度や自治体の制度融資は、内容や要件が地域・時期によって異なります。ご利用にあたっては、必ず各金融機関、信用保証協会、自治体の窓口で最新の内容をご確認ください。
「今回は見送らせていただくことになりました」。電話口でこう言われて、それ以上の説明はない。多くの経営者が経験されることです。何がいけなかったのかが分からないまま、次の手も打てない。資金の予定だけが狂っていく。
ここで申し上げたいことがあります。断られたこと自体より、そのあとの動き方のほうが、その後を大きく左右します。理由に見当をつけないまま別の銀行を回り始めた会社と、まず自社の何が引っかかったのかを確かめた会社とでは、半年後の状態がまるで違ってきます。
私はかつて、融資を実行する側にいました。申し込みを受け、決算書を読み、稟議を書き、そして断る側にもいました。断る理由は、実のところ、そう多くありません。この記事では、その内訳と、断られたあとに何をすればよいのかを順にお伝えします。
01
まず、ここを誤解のないようにお伝えします。銀行が断る理由を詳しく説明しないのは、意地悪をしているからではありません。いくつかの事情が重なっています。
結果として、返ってくるのは「社内で検討した結果」「今回はタイミングが」といった言葉になります。ここで「担当者と合わなかった」「運が悪かった」と片づけてしまうと、次も同じ結果になります。断りの言葉に情報は入っていませんが、断られた事実のほうには、はっきりした原因があります。
そして、その原因はほぼ決まったところにあります。何百件と稟議を書いてきた立場から申し上げると、断る理由は毎回違うようでいて、実際には数種類の組み合わせです。だからこそ、自社で見当をつけることができます。
「なぜ駄目だったのですか」と理由を問うても、定型的な答えしか返ってきません。代わりに、「どこがどうなれば、また検討していただけますか」と尋ねてください。次の条件を聞く形であれば、担当者も前向きな話として答えやすくなります。返ってきた言葉が、そのまま自社の直すべき点の手がかりになります。この一問があるかないかで、次の結果は変わります。
02
順に挙げます。決算書と、直近1年分の通帳。この2つを手元に置いて読んでみてください。自社がどれに当たるのかは、多くの場合ここで見当がつきます。
ここからが大切なところです。⑤だけが、他の金融機関に当たることで結果が変わり得る理由です。①から④までが原因であれば、どこへ持ち込んでも同じ判断になります。見ている数字が同じだからです。
にもかかわらず、断られた直後に真っ先に取られるのが「別の銀行を探す」という行動です。順序が逆です。まず理由の見当をつけ、自社側に原因があるなら、そこを直すことが先になります。銀行が決算書のどこを見ているかについては、「銀行は融資審査で何を見ているのか?決算書の5つのポイントと通らない理由」で詳しく整理していますので、あわせてご覧ください。
03
やることは、この順番です。1番目を飛ばして5番目から始めないでください。それが、断られたあとに事態を悪くする最も多い経路です。
決算書と通帳を並べ、前の章の5つのどれに当たるかを見ます。利益+減価償却費が年間の返済額に届いているか。純資産は実質でプラスか。滞納はないか。ここが出発点です。
「頑張ります」ではなく数字で示します。今後12か月の資金繰り表と、返済原資がどこから生まれるのか。過去ではなく、これからの話として組み立て直すことが要です。
何に、いくら、いつ使うのか。見積書があれば添えます。曖昧な「運転資金」のままでは通りません。金額の根拠が紙になっているかどうかで、話の進み方が変わります。
税金や社会保険料の滞納があれば、他の何よりも先です。ここが残っている限り道はふさがれたままです。分割納付の相談も含め、所轄の窓口に早く出向いてください。
日本政策金融公庫、信用保証協会の保証付き融資、自治体の制度融資。枠の性質が違うため、選択肢になり得ます。ただし01〜04を済ませてからです。
2番目の「返済できる根拠を作り直す」について補足します。銀行が知りたいのは、過去ではなくこれからです。決算書は過ぎたことの記録にすぎません。断られたということは、その記録だけでは足りなかったということです。ですから、これから12か月で現金がどう動くのかを自分の言葉と数字で示す。それが唯一、決算書を補える材料になります。資金繰り表の作り方と見どころは、「運転資金が足りないのはなぜ?資金繰りを立て直す5つの打ち手」に整理しています。
4番目の「滞納を最優先で片づける」は、順番の問題として強調させてください。滞納があるまま他の手を尽くしても、労力がほとんど報われません。逆に言えば、ここさえ解消できれば動き出せる会社は確実にあります。すぐに全額を納められなくとも、窓口に相談して分割の取り決めを交わし、それを守っている状態であれば、話が変わることもあります。取り扱いは事案によって異なりますので、まずは所轄の窓口へご相談ください。放置している状態と、相談して対応している状態は、まったく別のものとして扱われます。
5番目の「別の枠を当たる」についても一言。ここで大事なのは、「前の銀行に断られたので来ました」という入り方をしないことです。そうではなく、何にいくら必要で、どう返すのかを、一から説明できる状態で伺ってください。断られた事実を隠す必要はありませんが、それが相談の主題になってはいけません。
04
断られたあとは、どうしても焦ります。その焦りから出てくる動きのうち、後戻りが難しくなるものを4つ挙げます。
4つに共通しているのは、短期的に楽になる代わりに、次の選択肢を減らしているという点です。断られた直後は、視野が目先の1か月に狭まります。そこで一呼吸置けるかどうかが分かれ目になります。
05
まず時間軸から申し上げます。相談は、資金が不足する3か月前が目安です。融資は申し込んでから実行まで時間がかかります。書類をそろえ、審査を経て、契約して、実行される。この間に1か月から2か月はかかると見ておくべきです。来月の支払いが厳しいという段階で相談されても、間に合わないことがあります。
相談先としては、次のようなところが考えられます。
ここで、かつて融資を実行する側にいた立場から、一つ申し上げておきます。銀行が本当に困るのは、状況が悪い会社ではありません。状況が分からない会社です。赤字でも、借入が多くても、何が起きていて、これからどう戻していくのかを説明できる会社には、手の打ちようがあります。逆に、決算書が出てくるのが遅く、聞かないと何も分からない先は、良くても慎重に扱われます。
当事務所は伴走支援をモットーとしています。断られた理由の見立て、資金繰り表と事業計画の作成、そして金融機関への説明の場まで、一連の流れでご一緒しています。詳しくは「伴走支援」のページをご覧ください。補助金を使う場合の資金繰りについては「補助金は後払い。採択されても資金繰りが苦しくなる理由と5つの備え」もあわせてどうぞ。
最後に、もう少し先の話をさせてください。融資を断られる会社に共通しているのは、収益が受注の波に左右されていることです。売上が読めないから、返済原資も読めない。読めないから、貸す側も判断ができない。この構造を変えないかぎり、同じ場面が何度も訪れます。毎月決まって入る収益を自社のなかに作ることは、資金繰りの安定だけでなく、銀行への説明のしやすさそのものを変えます。考え方は「ストックビジネスとは」のページに、立ち上げの手順は「ストックビジネスとは?種類・メリット・始め方まで徹底解説」にまとめています。
FAQ
審査の基準や内部の判断そのものは開示されないとお考えください。ただし、聞き方によって得られる情報は変わります。「なぜ駄目だったのですか」と理由を問うと、定型的な答えしか返ってきません。そうではなく「どこがどうなれば、また検討していただけますか」と、次の条件を尋ねてください。この形であれば、担当者は前向きな話として答えやすくなります。返ってきた言葉は、そのまま自社が直すべき点の手がかりになります。断られた直後は気持ちの整理がつきにくいものですが、この一問を残しておくかどうかで、次の結果が変わります。
申し込むこと自体はできます。ただし、断られたときと同じ資料、同じ説明で持ち込んでも結果は変わりません。何かが変わっている必要があります。決算を一期越えた、赤字だった月次が黒字に転じた、滞納を解消した、資金使途と返済原資の説明を作り直した。こうした変化を示せる状態になってから、改めて相談してください。なお、断られたことで取引そのものが終わるわけではありません。むしろ、その後も月次の状況をきちんと報告し続けている先は、次の機会に話が通りやすくなります。
断られた理由によります。融資枠や業種の方針といった銀行側の事情が理由であれば、別の金融機関で結果が変わることはあります。一方、返済の見通しが立たない、債務超過である、税金や社会保険料の滞納があるといった自社側の理由であれば、どこへ持ち込んでも同じ判断になります。とくに信用保証協会の保証を前提とする申込では、複数の金融機関を経由しても同じ協会が判断することになりますので、申込先を増やすこと自体には意味がありません。まず理由の見当をつけ、自社側に原因があるなら先にそこを直してください。
初回相談は無料です。決算書と資金繰りを拝見し、何が引っかかっているのか、次に何を用意すればよいのかを具体的に整理いたします。無理な勧誘は一切いたしません。
無料相談を申し込む